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ウイスキー  (Whisky)

ブランデー  (Brandy)
ジン (GIN)

ウオツカ(Vodka)

ラム(Rum)


テキーラ(Tequila)

アクアビット(Aquavit)

コルン(Korn)

アラック(Arrack,Arak)

しょうちゅう
リキュール  (Liqueur)

ワイン (Wine)

ビール (Beel)

酒類

酒類の定義

酒類の定義は,国によって違いがあるが,日本では,酒税法が酒の定義を明らかにしている。酒税法第2条に,「酒類とは,アルコール分1度以上の飲料をいう」と規定されている。そして,アルコール分1度以上の飲料は,すべて酒税法上の「酒類」となり,この法律の適用を受けることになる。
日本の酒税法でいうアルコール分とは,15℃で原容量100分中のエチルアルコールの容量をいう。つまり,100mlの液体中に何mlのエチルアルコールが含まれているかを指している。仮に1ml含まれているとすると,アルコール含有率1%で、日本ではこれをアルコール度数1度とする。したがって《アルコール度=アルコール含有率(容量率による%)》となる。
このようなアルコール分の表示法は国によってさまざまで、わが国のように容量パーセント(Percent by Volume)方式を採っている国はEC諸国など比較的多数だが,重量パーセント(Percent by Weight 100gの液体に含まれるエチルアルコールの重量)を使っている国,アメリカやイギリスのようにプルーフ(Proof)という単位を採用している国もある。
ただし,同じプルーフでもアメリカのプルーフ(American Proof)とイギリスのプルーフ(British Proof)では,基準が大きく異なっている。アメリカン・プルーフでは,華氏60度(摂氏15.6度)の純水を0プルーフ,純エチルアルコールを200プルーフとする。したがって,わが国のアルコーrル度数(容量パーセント)を2倍にしたものがアメリカン・プルーフになるわけで、86プルーフのバーボンなら,アルコール分43度に相当する。
ブリティッシュ・プルーフは,華氏51度(摂氏13.2度。イギリスの酒蔵の平均的な気温とされる)で容量率57.1%のアルコール含有液を100プルーフとする。
これだと,純水は0プルーフ,純エチルアルコールは175プル一フになる。そして100プルーフを基準にして,それより容量率が高いものをオーバー・プルーフ(o.p),低いものをアンダー・プルーフ(u.p)と表記する。純水はu.p.100,純エチルアルコールはo.p.75ということになる。ラベルにu.p.25と表記されているスコッチ・ウイスキーの容量率によるアルコール度数は,(100-25)プルーフ×57.1%=75xO.571=42.8となり,約43度になる。
このように,ブリティッシュ・プルーフは複雑なので,近年,輸出用のスコッチ・ウイスキーなどでは,アメリカン・プルーフや容量パーセントで表示する傾向が強くなっている。

エチルアルコール(Ethyl Alcohol)について
アルコールは,一般的に,植物の種子,果実,根などを原料とし,糖化発酵によって得られる揮発性,可燃性を持った液体。純粋なアルコールは,アルコールを含む発酵液(もろみ)を蒸留して分離する。化学的には,炭素原子(C)と水素原子(H)が結合した炭化水素の,水素原子のひとつまたは二つが水酸基(OH)に置き換わったもの,とされている。
糖化とは,アミラーゼなど澱粉質分解酵素によって澱粉質をブドウ糖,職唐などの糖質に変える作用で,普通,大麦麦芽,麹カビなどのアミラーゼが使われている。
また,発酵とは,酵母によって糖分を分解,アルコールと炭酸ガスを生成する作用であり,その化学式は,一般に次のようになる。
C6H12O6(ブドウ糖など)→2C2H50H(エチルアルコール)十2CO2(炭酸ガス)
アルコールには,エチルアルコール(Ethyl Alcoholエタノール酒精),メチルアルコール(Methyl Alcoholメタノール木精)とフーゼル油(アミルアルコールなど)といった高級アルコールがあるが,通常,アルコールといえばエチルアルコールを指す。飲用できるアルコールは,エチルアルコールのみで,メチルアルコールは人体に有害。エチルアルコールは,プラスチックの原料であるエチレンから合成することもできるが,飲用はできない。
■エチルアルコールの性質
@純粋なものは,無色透明
A比重は水よりも軽く,15℃で0.7936(約O.8)
B沸点は,78.325℃(1気圧で)
C疑固点は、−135℃(−80℃で粘りが出てくる。ただし,−20度ほどの冷凍庫でジンなどがトロトロになるのは,水が凍りかけて粘性が出てきたもの)
D水を吸収する力が非常に強く,水に溶けやすい。酸,アルカリもよく溶ける(少しでも水があれば吸収するため,純粋アルコールというのは普段は見られない)
E燃えやすい
F致酔作用を持つ

酒類の分類
酒類は,製造法によって,醸造酒,蒸留酒,混成酒に分類される。
1.醸造酒
醸造酒は,酵母のアルコール発酵作用で生まれた酒。醸造による酒は,紀元前4000年頃から知られていた,という。
醸造酒には,糖質原料をそのまま酵母で発酵させるタイプ(単発酵酒ともいう)と,澱粉質原料をいったん糖化してから酵母で発酵させるタイプ(複発酵酒ともいう。酵母には澱粉を糖化する酵素がないため,あらかじめ澱粉質を糖分に変えなければならない)がある。前者ではブドウ原料のワイン,後者では穀物原料のビール(大麦),日本酒(米)などが大表的なもの。糖化には,大麦麦芽(ビール,ウイスキーなど西洋の酒),麹カビ(清酒など東洋の酒)などを使用し,発酵には,天然酵母または培養酵母を使用する。
高濃度のアルコール溶液中では不活性になる酵母の性質から,醸造酒のアルコール分はあまり高くない(一般的に15〜16%。清酒では20%以上になることがある)が,原料の特性はよく残っている。
2.蒸留酒
発酵によって生まれた酒を,さらに蒸留してつくった酒で,アルコール分が高いのが大きな特徴。ブドウをはじめとするさまざまな果実,サトウキビ,穀類,イモ類,竜舌蘭など,産地の実情によって多彩な原料が使われている。
アルコールの沸点の低さを利用した蒸留の技術は,10〜11世紀頃,中国あるいはペルシャに起こり,錬金術の流行とともにヨーロッパに伝わったとされる。15世紀頃には,薬としてのオードビー(Eau de Vie 生命の水=蒸留酒)の生産がヨーロッパ各地で盛んになり,17世紀に入ると,フランスのコニャック地方などでブランデーの本格的な生産が始まらた。
蒸留には,1回ずつもろみを取り替える単式蒸留器,または連続してもろみを投入できる連続式蒸留機が使われる。一般に,単式蒸留では,アルコール分70%前後,連続式蒸留では90〜95%以下の蒸留液を得る。蒸留精度が低ければ,相対的に蒸留液に含まれる香味成分は多い。精度を高くすると,香味成分は少ないが,それだけ,おだやかなスッキリとした味わいの蒸留酒が得られる。
3.混成酒
醸造酒や蒸溜酒を原料にして,草根木皮,果実,香料,糖類などを混ぜたり,エキスを浸出させたりしてつくった酒で,リキュールとも呼ばれる。混成酒は,使用する材料に由来する香味などの違いによって,香草・薬草系(シャルトリューズ,カンパリなど),果実系(キュラソー,スロー・ジンなど),種子・核系(アマレット,カカオ・リキュールなど),その他に分類することができる。

酒の熟成
多くの酒は,醸造(蒸留)後すぐに飲用せず,一定期間,貯蔵・熟成して香味を安定させてから飲まれる。とりわけ,蒸留酒は,短期長期の別はあるにしても,熟成が欠かせない。ウイスキーやブランデーのように,長期間の樽貯蔵による熟成効果が,品質向上に大きな役割りを果たしている酒も少なくない。
酒類の熟成がどのようなメカニズムで進むのかについては,現在でも,十分に解明されていないが,アルコールや水の分子が熟成中に結合すること(分子結合),貯蔵に用いられる樽の成分が影響することなどが知られている。
1.分子結合
熟成中,水の分子,アルコールの分子がくっつき(結合),大きな分子の塊になる現象。初期には,水と水,アルコールとアルコールの分子が結合するが,やがて水とアルコールの分子が結合し始める。こうなると,アルコールの刺激を強く感じなくなり,なめらかな香味になるなど,酒の質的向上が実現する。
これは,あらゆる酒に当てはまる熟成効果だが,特にジン,ウオッカ,ラムなどホワイト・スピリッツの品質向上にとって重要な現象だ。
2.樽の効果
ブラウン・スピリッツの代表的な存在であるウイスキーを例にして,樽による熟成効果を見ておこう。
一般的に,ウイスキーは,もっとも樽材の影響を受けやすいとされるアノレコール度数60度ほどで樽貯蔵する。貯蔵中のウイスキーの99%以上はアルコールと水であり(40%近くが水),残りの1%に満たない微量成分が熟成に大きな役割りを果たしている。その熟成による主要な変化は,次のようになる。
@酸素がウイスキー中の微量成分を酸化,芳香成分に変える。
A樽材の成分(主としてタンニン)が溶け出し,ウイスキーを琥珀色に着色,さらにバニラのような芳香を生成する。
B微量成分同士が反応し,香味成分に変化する。
Cアルコールが酸化してアルデヒドを生成,さらに花の香りのアセタールに変化する。
D貯蔵中,ウイスキーは年に2%ほどの割合で蒸発し(貯蔵室の湿度が高いとアルコールが蒸発しやすくなり,逆に低いと水が蒸発しやすい),香味成分が濃縮される。
熟成とは,分子結合を含めて,これらの変化の総合的な現象であり,したがって,人為的に香味成分を加えたりしても,本来の熟成効果は得られない。自然の営みと時間の営みだけが,望ましい酒の熟成を可能にするといっていいだろう。
この他に,熟成に影響を与える要素として,
@新樽か,古樽か
Aシェリー樽,バーボン樽の別(特にスコッチウイスキー,ジャパニーズウイスキーの場合)
B樽の大きさ(小さい樽ほど樽材の影響を受けやすい)
C樽の焼き(チャー)の度合い
D貯蔵室の気温(低温ほど熟成はゆっくりと進む),湿度
E貯蔵場所の条件(土間かコンクリートか,地表からの高さなど)
F貯蔵期間(長ければいい,というものでもなく,熟成のピークは酒類ごとに異なっている)
などが挙げられる。原料の大麦麦芽や水酵母などの違いだけでなく,こうした熟成条件を変えることでも,性格の異なったウイスキーをつくることができる。ブランデー,ラム(ダーク)など他のブラウン・スピリッツの熟成も,基本的に同様の変化と考えられている。


ウイスキー(Whisky)
ウイスキーは,大麦,ライ麦,トウモロコシなどの穀類を原料として,糖化,発酵させ,さらに蒸留して,樽の中で熟成させた酒。蒸留には,単式蒸留器(ポットスチルPot Still)と連続式蒸留機(パテントスチルPatent Still)が使用されているが,蒸留法の違いによって,ウイスキーの香味はかなり異なってくる。また,長期の樽(オーク材)熟成により,ウイスキー特有の琥珀色を帯び,熟成時の環境(気候など自然条件,樽材など)の影響を受けて,さまざまな個性を持ったウイスキーが生まれている。
ウイスキーの歴史
ウイスキーの語源とされるゲール語のUisge-beatha(ウシュク・べ一ハー 生命の水)は,ラテン語のAquavitae(アクアヴィタエ 生命の水)からきており,ブランデーなど他のスピリッツ同様,錬金術と深い関わりを持っている。このUisge-beathaがUsquebaugh(アスキボーまたはウスケボー)に変化,さらに簡略にUsky(ウスキー)と呼ばれるようになり,Whisky(イギリスやカナダの表記),Whiskey(アイルランドやアメリカでの表記)と転化したといわれている。
ウイスキーがいつ頃つくられ始めたのかは明らかでないが,1172年,イングランドのヘンリー2世の軍隊がアイルランドに進攻したとき,現地でUsquebaughと呼ばれる穀物を蒸留した酒を飲んでいるのを見た,と史書に記録が残っている。
また,1494年のスコットランド大蔵省の記録には,「修道士ジョン・コーに発芽大麦8ボルを与え,生命の水(aquavitae)をつくらしむ」と記載されており,すでに,スコットランドでもウイスキーづくりが行なわれていたことがわかる。スコッチ・ウイスキーの生産者団体であるスコッチ・ウイスキー協全(本部・エジンバラ)は,この1494年を「ウイスキー誕生の年」としており,1994年には,盛大な「スコッチ・ウイスキー誕生500年記念式典」を開催した。
15世紀末のスコットランドのウイスキーは,まだ蒸留しただけの無色透明,荒い風味のスピリッツであり,現在のような琥珀色に熟成した香味豊かな酒ではなかった。ウイスキーの樽による貯蔵・熟成がいつ頃,どのようなきっかけで始まったのか,については,次のような密造にまつわる説が広く信じられてきた。
1707年のイングランドによるスコットランド併合で大ブリテン王国が成立して以後,麦芽税の課税,500ガロン以下の小型蒸留器の禁止などスコットランドのウイスキー蒸留業者に不利な施策が相次いで打ち出された。このとき,スコットランドのローランド地方に本拠を置いた規模の大きい蒸留業者は,大麦麦芽以外の穀物を原料に取り入れ,麦芽の使用を減らすことで対抗したが、ハイランドの零細な蒸留業者は,山や谷深く隠れ,密造を始めた。彼らは,作業のしやすさから大麦麦芽
を使い続け,麦芽の乾燥には従来の天日乾燥ではなく,人目に付かない屋内で,ハイランド山中に無尽蔵にあるピート(草炭)を燃やして乾燥した。そして,蒸留したウイスキーをシェリーの空樽に詰めて隠し,徴税吏の目から逃れようとした。この結果,ハイランドのウイスキーは,ピートのスモーキー・フレーバーを持つ琥珀色の口当たりの柔らかなスピリッツになった。人々は,偶然にも,樽貯蔵によるウイスキーの熟成効果を知ったのだ。
この説には,熟成効果が得られるほど長期間,危険を冒してウイスキーを隠匿する不白然さや,当時,マデイラ・ワインやシェリーの樽熟成が知られていたはずで,スコットランドのウイスキー蒸留業者も意図的に樽貯蔵によるウイスキーの質的向上を図っていたのではないか,などの否定的な指摘も多い。ハイランドの有力者の娘であるエリザベス・グラントが書いた日記には,「1822年,ジョージ・スミスが樽で熟成させていたミルクのようにマイルドなウイスキーを,スコットランドを訪れたジョージ4世の求めに応じて献上した」とあり,いずれにしても,遅くとも19世紀初めには,ウイスキーの樽による熟成が行なわれており,一部の上流階級に珍重されていた,と考えられよう。
エリザベスの日記に登場するジョージ・スミス(GeorgeSmith)は,1823年,密造根絶のため小規模蒸留を認めたウイスキー法の施行で,免許取得第1号となったザ・グレンリベット蒸留所の創始者として知られる。この年以降,ハイランドの山中に隠れていたウイスキー蒸留業者(彼らは,イングランド政府に抵抗した誇り高き密造者の意味でスマグラー・Smugg1erと呼ばれた)が相次いで表舞台に登場する。
一方,ローランドの大規模蒸留所では蒸留の効率化を進めていたが,1826年,蒸留業者ロバート・スタイン(RobertStein)が連続式蒸留機を発明した。1831年には,アイルランド,ダブリンで徴税吏をしていたイーニアス・コフィ(Aeneas Coffey)が,より効率のいい連続式蒸留機を発明,特許を取った。この連続式蒸留機は,コフィ・スチル(Coffey Still)または特許(パテント)を取ったのでパテント・スチル(Patent Still)と呼ばれているが,これによって,トウモロコシや小麦など大麦麦芽以外の穀物を原料としたグレーン・ウイスキーが量産されるようになった。
1853年,エジンバラの酒商だったアンドリュー・アッシャー(Andrew
Usher)がモルト・ウイスキーとグレーン・ウイスキーをブレンドしたブレンデッド・ウイスキーを発売,モルトの豊かな香味とグレーンの飲みやすさを併せ持ったこの新タイプのウイスキーは,人々に広く受け人れられた。ブレンデッド・ウイスキーが支持を広げていくに従い,スコットランドのウイスキー生産の主導権は,大規模なグレーン・ウイスキー蒸留業者に移っていった。1877年,ローランドの大手蒸留業6社によりD.C.L.(Distillers Company Limited)が結成され,生産,販売両面で大きなシェアを占めるようになった。
1880年代に入って,ブドウ畑に壊滅的な被害を与えたフィロキセラ虫害により,フランスのワイン,ブランデーの生産が激減したが,これはブレンデッド・スコッチ・ウイスキーに有利に働いた。これまでコニャックなどフランスのブランデーを飲んでいたイギリスの上流階級は,コニャックに代わる熟成ブラウン・スビリッツとしてウイスキーを飲み始めたのだ。やがて,専らジンを愛飲していた庶民層にもウイスキーが浸透していった。以後,D.C.L.などの大手生産者は,アメリカはじめイギリスと関わりのある国々にウイスキーの輸出を始め,スコッチ・ウイスキーは,今日の世界の酒の地位を築いていく。
アメリカでのウイスキーづくりは,18世紀に入ってから始められた,と考えられている。蒸留酒の生産自体は,植民地開拓が始まった17世紀初頭から行なわれていたが,ウイスキーではなく,果物を原料にしたブランデーや糖蜜(砂糖を精製した残液)を使ったラムが主体だった。アメリカのラムづくりは,奴隷売買を軸にした悪名高い三角貿易(サトウキビ栽培の盛んな西インド諸島に奴隷を売り,糖蜜を輸入する。アメリカで蒸留したラムをヨーロッパに運んで売り,その利益でアフリカからさらに奴隷を買う)に支えられていたので,1808年,奴隷取引廃止令が施行されると,急速に衰退,代わりに穀物を原料にしたスピリッツ(ウイスキー)がペンシルバニアなどで生産されるようになった。当時の蒸留は,農民の余剰穀物の処理として広がったもので,小型の単式蒸留器による家内工業的,零細な規模がほとんどだった。
1791年,独立戦争後の経済再建のため,政府は蒸留酒に課税する法律を公布したが,これに反対する農民は,いわゆる「ウイスキー暴動」(1794年)を起こすなど強く抵抗した。このとき,多数の農民が西部に移り,ケンタッキー,インディアナ,テネシーなどに新天地を求めた。農民たちは,この地域に適した穀物であるトウモロコシを栽培し,トウモロコシを原料にして蒸留酒をつくり始めた。
現在,アメリカを代表するウイスキーとして知られるバーボン(Bourbon Whiskey)は,18世紀の末ケンタッキー州バーボン郡で誕生した。この地で最初にバーボン(バーボン・ウイスキーという名称が一般に使われるようになるのは,1820年代以降とされるが…)をつくった人物として,エヴァン・ウイリアムス(Evan Williams)や牧師のエリア・クレイグ(Elijah Craig)などの名前が挙げられている。
アメリカの酒類生産は,1920年から13年間続いた禁酒法によって,表面的には廃止されたが,一部の人々は,バーボンやコーン・ウイスキーなどを密造した。
彼らは,月明かりの下で蒸留したのでムーンシャイナー(Moonshiner)と呼ばれ,密造ウイスキーは,ムーンシャイン,あるいはマウンテン・デュー(Mountain Dew 山の露)と呼ばれた。
ほとんど効果がなかったばかりか,密売,闇酒場の横行で飲酒人口を増やす結果に終わった禁酒法が廃止されると,アメリカのウイスキーづくりは,連続式蒸留機が主流になり,資本力の大きい企業に集約されていった。
カナダの本格的なウイスキーづくりは,アメリカの独立戦争後,移住してきた王党派(独立反対派)の人々によって,ケベックやモントリオールを中心とする地域で始められた。当初は,製粉業考が副業的に始めたが,しだいに専業の蒸留会社が設立され,19世紀後半には,アメリカに輸出するまでになる。
アメリカの禁酒法時代には,カナダから大量のウイスキーがアメリカに密輸され,その量は,年間4万klにも上ったという。カナダのウイスキーづくりは,アメリカ市場に依存する形で発展してきたが,現在では,世界各国への輸出にも力を入れている。
わが国にウイスキーが伝えられたのは,1853年,アメリカのペリーが黒船(軍艦)を率いて浦賀に来航したとき,ウイスキーなど各種の洋酒を持ってきたのが最初だとされている。明治時代になると,薬種問屋などがウイスキーの輸入を始めたが,量的には,ごくわずかにとどまっていた。明治・大正期を通じて,ウイスキーは限られた一部の人々だけに飲まれ,庶民には遠い存在だった。
日本における本格的なウイスキーづくりは,1923年,寿屋(現サントリー)の鳥井筒台郎が京都郊外の山崎に建設したモルト・ウイスキー蒸留所に始まる。鳥井は,スコットランドでウイスキーの製法を学んだ初めての日本人である竹鶴政孝を技師として招き,国産ウイスキーの開発に精力を傾けた。6年後の1929年,山崎蒸留所で熟成したジャパニーズ・ウイスキー第1号の製品が発売された。以後東京醸造,ニッカなどがウイスキーの生産に乗り出し,第二次大戦後,オーシャン(現メルシャン),東洋醸造(現旭化成),キリン・シーグラムなど多数の企業がウイスキー事業に参入した。
第二次大戦後の日本では,開放された気分とアメリカ文化への関心もあって,若い世代にウイスキーが受け入れられた。全国に誕生したスタンドバーでは,国産ウイスキーが飲まれ,ウイスキーは大衆的な基盤に支えられて目覚ましい発展の時代を迎えることになる。
現在の世界の主要なウイスキー産地は,上記のスコットランド(イギリス),アイルランド,アメリカ,カナダ,日本の5力国で,原料,製法,風土の違いに由来
する独特な香味を競っている。
スコッチ・ウイスキー(Scotch Whisky)
スコッチ・ウイスキーは,スコットランドで蒸留,熟成,ボトリングされたウイスキーの総称、スコッチ・ウイスキーは,製造法の違いからモルト・ウイスキー,グレーン・ウイスキー,ブレンデッド・ウイスキーの三つに分けられる。
1.モルト・ウイスキー(MaltWhisky)
大麦麦芽(モルト)だけを原料に,発酵後,単式蒸留器で2回蒸留し,オークの樽で長期間(最低でも3年,長いものは20年を越える)じっくりと熟成させる。
蒸留精度(蒸留液のアルコール度数)は,60〜80%で,原料に由来する香味成分を豊かに残している。
モルト・ウイスキーは,モルトに焚き込んだピート(草炭)のスモーキー・フレーバーと重厚な香味が特徴。大麦麦芽に焚き込むピートの加滅,使用する水の質,酵母の違い,蒸留器の形状,樽熟成の方法や環境の違い,熟成年数などによって,さまざまな個性のモルトウイスキーがつくられている。
現在,約100カ所ある蒸留所でつくられたモルト・ウイスキーは,大部分ブレンデッド・ウイスキーに回されるが,一部はシングル・モルト・ウイスキー(Single Malt Whisky単一の蒸留所のモルト・ウイスキー)としても販売される。
市販されているモルト・ウイスキーには,ヴァッテド・モルト・ウイスキー(Vatted Malt Whisky)と表示しているものがあるが,これはいくつかの蒸留所のモルト・ウイスキーを混ぜ合わせた(ヴァッティングした)ウイスキーだ。シングル・モルト・ウイスキーとヴァッテド・モルト・ウイスキーは,いずれもピュア・モルト・ウイスキー(Pure Malt Whisky)と呼ばれる。また,グレーン・ウイスキーとブレンドしていないという意味で,アンブレンデッド・ウイスキー(Unb1ended Whisky)ともいう。
モルト・ウイスキーは,蒸留所ごとに異なった個性を持っており,厳密にいえば樽ごとに性格が違うが,それでも,生産地域によって共通する個性がある。
八イランド・モルト(Hghland malt)北部ハイランド地域のモルト・ウイスキー。さわやかなピート香とまろやかな香味が特徴。蒸留所が集中しているスペイ川周辺(スペイ・サイドSpeyside)のフルーティな芳香と華やかな香味を持つモルトをハイランドから分離して,スペイ・サイド・モルトと呼ぶことがある。
ローランド・モルト(Lowland Malt)南部ローランド地域のモルト・ウイスキ一で,穏やかなピート香とソフトな風味を持っている。
アイレイ・モルト(Islay Malt)スコットランド西部のアイレイ島でつくられるモルト・ウイスキー。強いピートのスモーキー・フレーバーとヘビーな香味に特徴がある。
キャンベルタウン・モルト(Campbeltown Malt)西部のキンタイア半島先端のキャンベルタウンでつくられている。ヘビーな風味だが,アイレイ・モルトほど個性は強くない。
2.グレーン・ウイスキー(GrainWhisky)
大麦麦芽,トウモロコシ,小麦などの穀類を原料に,糖化,発酵させ,連続式蒸留機で蒸留し,樽で熟成する。蒸留精度は,95%未満。ピート香を付けず,柔らかくライトな風味に仕上げる。ほとんどブレンド用に使われている。
3.ブレンデッド・ウイスキー(Blpded Whisky)
数十種のモルト・ウイスキーとグレーン・ウイスキーをブレンドし,豊かな風味と飲みやすさを持っている。ブレンダーのブレンドの技術(モルト・ウイスキーとグレーン・ウイスキーの配合比率など)で,多様な個性を持ったブレンデッド・ウイスキーがつくり出されている。
アイリッシュ・ウイスキー(Irish Whiskey)
アイルランド産のアイリッシュ・ウイスキーの製法は,ピートを焚き込まない大麦麦芽,大麦,ライ麦,小麦などを原料に,大型の単式蒸留機で3回蒸留し,樽で3年以上熟成させる。こうして得られたアイリッシュ・ストレート・ウイスキー(Irish Straight Whiskey)は,スコッチのモルト・ウイスキーに比べてピート香がなく,やや軽い風味が特徴。
1970年代になって,このストレート・ウイスキーにグレーン・ウイスキーをブレンドした軽決な味わいのブレンデッド・アイリッシュ・ウイスキーが生まれ,世界的なライト嗜好に乗って人気を得た。
蒸留機の大型化とともにアイリッシュ・ウイスキーのメーカーの統合が進み,現在では事実上,アイリッシュ・ディステラリー(Irish Distillary)社一社によって生産されている。また蒸留所も南部のコーク市近郊にあるミドルトン(Middlton)蒸留所と北アイルランド(イギリス)のブッシュミルズ(Bushmi11s)蒸留所の2カ所に集約されている。
アメリカン・ウイスキー(Ampican Whiskey)
アメリカのウイスキーは,主要原料(全体の51%以上を占める原料)によって,バーボン(トウモロコシ),ライ(ライ麦),ホイート(小麦),モルト(大麦),ライ・モルト(ライ麦麦芽),コーン(トウモロコシコーン・ウイスキーは原料の80%以上トウモロコシを使用しなければならない)ウイスキーの6種に大別されている。そして,製造法によって,ストレート・ウイスキー,ブレンデッド・スト
レート・ウイスキー,ブレンデッド・ウイスキーの3タイプに分類されている。
アメリカにおけるウイスキーの表記は,法律上はWhiskyだが,一般には慣習的にeを加えてWhiskeyと表記している。
1.ストレート・ウイスキー(Stmight Whskey)
アルコール度数80度以下で蒸留し,内部を焦がしたホワイト・オークの新樽で最低2年貯蔵する。ただし,ストレート・コーン・ウイスキーには樽の制限がなく,貯蔵年数も必要な期間となっている。
ストレート・バーボン・ウイスキー(Stmight Bourbon Whiskey)51%以上のトウモロコシにライ麦,小麦,大麦麦芽などの原料を糖化発酵させ,連続式蒸留機でアルコール度数80%で蒸留,内部を焦がしたホワイト・オークの新樽に入れて,2年以上,熟成させる。ストレート・バーボンの発酵法には,糖化液(マッシュ Mash)に純粋培養した酵母を加えるスイート・マッシュ(Sweet Mash)法と,マッシュに前回の蒸留に使った発酵液(ウォッシュ Wash)を25%以上加えるサワー・マッシュ(Sour Mash)法がある。サワー・マッシュ法では,複雑な風味を持ったバーボンが生まれる。ストレート・バーボンは,原料の配合,発酵法,水(石灰岩層をくぐり抜けたライムストーン・ウォーターLimestone
Water)の性質,樽の焦がし方,熟成期間など,さまざまな要因の違いで,バラエティに富んだ製品がつくられている。
ストレート・ウイスキーには,バーボンの他に,
ストレート・ライ・ウイスキー(Straight Rye Whiskey),ストレート・ホイート・ウイスキー(Straight Wheate Whiskey),ストレート・モルト・ウイスキー(Straight MaltWhiskey),ストレート・ライ・モルト・ウイスキー(Straight Rye Malt Whiskey)ストレート・コーン・ウイスキー(Straight Corm Whiskey)がある。
サトウカエデの炭で濾過(チャコール・メローイング Charcoal Mellowing)するテネシー・ウイスキー(Temessee Whiskev)もストレート・バーボンに分類されている。
2.ブレンデッド・ストレート・ウイスキー(Blnded Straight Whiskey)
ストレート・ウイスキーどうしをブレンドする。
3.ブレンデッド・ウイスキー(Blnded Whiskey)
ストレート・ウイスキー20%以上(100プルーフ換算)に,スピリッヅや他のウイスキーなどをブレンド。アメリカン・ブレンデッド・ウイスキーとも呼ばれている。
この他のアメリカン・ウイスキーには,アルコール度数80度以上95度未満で蒸留,内部を焦がさない新樽か古樽で貯蔵したライト・ウイスキー(Light Whiskey)などがあるが,よく飲まれているのは,ストレート・バーボン,アメリカン・ブレンデッドの2種で,他のウイスキーはごくわずかにとどまっている。
わが国に輸入されているバーボン・ウイスキーの中に,Bottledin Bond(ボトルド・イン・ボンド)と表示されているものがあるが,これは,ボトルド・イン・
ボンド法(保税倉庫=Bond内で,アルコール度数100プルーフで4年以上貯蔵し,瓶詰めしたウイスキー)に従って製品化したもの。
カナディァン・ウイスキー(Coadian Whisky)
トウモロコシ主体の原料を連統式蒸留機で蒸留し,樽で3年以上熟成した軽い風味のべ一ス・ウイスキー(Base Whisky スコッチのグレーン・ウイスキーと同タイプ)に,ライ麦主体の原料を連続式または単式蒸留機で蒸留,やはり3年以上樽貯蔵したフレーバリング・ウイスキー(Fravering Whisky)をブレンドする。
べ一ス・ウイスキーの蒸留精度は95%以下だが,フレーバリング・ウイスキーは84%程度で蒸留する。
カナディアン・ウイスキーは,穀物由来の風味が柔らかく,もっともライトなタイプのウイスキーだ。ブレンド後の原料比率で,ライ麦が51%以上なら,ライ・ウイスキー(Rye Whisky)と表示できる。
日本のウイスキー(Japanese Whisky)
わが国のウイスキーの生産は,1923年に始まった。当初は,スコッチ・ウイスキーの技術に学んだウイスキーづくりだったが,やがて特有の白然条件の中で,独自のマイルドな香味を特徴とするウイスキーを生み出した。
基本的な製法は,スコッチと同じく,大麦麦芽(モルト)を原料にして,単式蒸留器で2回蒸留,樽で長期熟成したモルト・ウイスキーと,トウモロコシ主体の穀物原料を連続式蒸留機で蒸留して,樽熟成したグレーン・ウイスキーをつくり,これをブレンドしてブレンデッド・ウイスキーとする。モルト・ウイスキーは,スコッチに比べてピートによるスモーキー・フレーバーがソフトに抑えられている。
1989年4月の酒税法改訂によって,ウイスキーの級別課税が廃止され,わが国のウイスキーは,従来の特級,1級.2級の区別がなくなり,一本化された。

ブランデー(Brandy)
ブランデーは,フルーツを発酵させ,蒸留した酒のすべてを指す言葉として使用されているが,単に「ブランデー」というときは,ブドウ原料のワインを蒸留したグレープ・ブランデーを指している。ブドウ以外のフルーツを原料にした場合は,フルーツ・ブランデーと総称され,アップル・ジャック(Apple Jack リンゴ原料),キルシュワッサー(Kirschwasser サクランボ原料)などブランデー以外の名称で呼ばれることが多い。
ブランデーの語源は,オランダ語の焼いたワイン(英語ではBumt Wine)を意味するブランデウェイン(Brandewijn)がイギリスて“転訛して,ブランデーとなった,といわれている。また、Brandewijnは,コニャック地方の人々が「ワインを蒸留した酒」の意味で使っていたヴァン・ブリュレ(Vinbru le熱したワイン)をオランダ語に直訳したもの,とされている。
ブランデーの歴史
ブランデーがいつ,どのようにしてつくられるようになったか,については不明だが,中世の錬金術師によって,ワインを蒸留する技術がもたらされたと考えていいだろう。フランスのブランデーに関する最古の記録は,アルマニャック地方のオー・ガロンヌ県のもので,1411年には,この地方で「生命の水(フランス語でオー・ド・ヴィーEaudeYie)」がつくられていたと記録されている。16世紀になると,ボルドー,パリ,アルザスなどで蒸留の記録が残っており,17世紀には,コニャック地方で企業化されたブランデーづくりが始まっている。
コニャック地方のブランデーの起こりは,1562年から1598年にかけての宗教戦争が契機となった。古くからワインの産地として知られていたコニャック地方は,宗教戦争の主戦場となったためにブドウ畑が荒廃し,戦争が終結しても戦前のような声価は得られなかった。そこで当時,大西洋貿易の実権を握り・コニャック地方のワインも扱っていたオランダの貿易商が,ワインを蒸留してオー・ド・ヴィーとすることを勧め,北欧やイギリスで販売したが,この新しい蒸留酒は,特にイギリスで歓迎された。
グレープ・ブランデー(GmpeBmndy)
グレープ・ブランデーはワインを蒸留してつくる。したがって,ワインの主要生産国は,フランスを筆頭に,スペイン,イタリア,ギリシャ,ドイツ,ポルトガル,アメリカ,南アフリカ,ロシア,ブルガリアなど,多少にかかわらずブランデーを生産している。なかでもフランスのコニャック地方と,アルマニャック地方のブランデーは世界的に知られており,コニャック,アルマニャックという名称は,1909年のフランス国内法(A.C法。原産地呼称統制法)で,厳しく規制されている。
1.コニャック(Cognac)
コニャック地方のブランデーはオー・ド・ヴィ・ド・ヴァン・ド・コニャック(Eau-de-viedevindeCognac)といい,フランス西部,コニャック市を中心としたシャラント(Charente)と,シャラント・マリティーム(Charente Maritlmes)の二つの県の法定地域内でつくられる。それ以外の地域で生産されたブランデーをコニャックと称することはできない。
原料のブドウは大部分が,サンテ・ミリオン(Saintemllio 現地ではユニ・ブランUgni blancと呼んでいる)でこれから得られる酸味の強いワインを蒸留する。蒸留は,シャラント型と呼ばれる伝続的な単式蒸留器で2度行ない,アルコール度数75%程度の蒸留液を得る。それをリムーザン地方(Limousin)かトロンセ(TronCais)の森で採れたオークの樽で長期間熟成した後.ブレンドして瓶詰めする。
コニャックの法定地域は,土壌の質によって6地域に区分されており,それぞれ特有の性格を持ったブランデーを生み出している。
@グランド・シャンパーニュ(Grand Champagne)石灰質の土壌で,ブランデーは熟成に年月がかかるが,香り高く繊細で,上品な香味を持っている。
Aプティ・シャンパーニュ(Petite Champagne〕やや個性に乏しいが,グランド・シャンパーニュに次く“優れたブランデーを産む。比較的,熟成は早い。
Bポルドリ(Borderies)腰が強く,豊かなボディのブランデーができる。
Cファン・ボア(Fins Bois)若々しく,軽決なブランデーを産む。
Dボン・ボア(Bons Bois)ブランデーの香味は,やや痩せている。
Eボア・ゾノレディネール(Bois Ordinaires)やや荒い風味のブランデー。
グランド・シャパーニュ地域でブドウの収穫から出荷まで一貫して作業した製品は,グランド・シャンパーニュと表示できる。また,グランド・シャンパーニュに50%以下の割合プティ・シヤンパーニュ地域のブランデーをブレンドした製品は,フィーヌ・シャンパーニュ(F1neChampagne)と表示できる。
2.アルマニャック(Armagmac)
アルマニャック地方のブランデー,オー・ド・ヴィ・ド・ヴァン・ダルマニャック(Eau‐de-viede vind'Armagnac)は,フランス南西部アルマニャック地方の法定生産地域でつくられたもの。ブドウは,フォル・ブランシュ(Fol1e Blanche),サンテ・ミリオンが.主に使われる。蒸留は独特の半連続式蒸留機で1回だけ行なわれる(蒸留精度55%程度。1972年以降,コニャック式の単式蒸留器による2回蒸留が認められており,72%まで蒸留精度を高めることができる)。貯蔵に使う樽材は,ガスコーニュ産のブラック・オークが最良とされている。コニャックに比べ、香りが強く,フレッシュで、ハッラツとした味わいが特徴。
アルマニャックでも,法定地域内を土質によって区分している。
@バ・ザルマニャック(Bas・Armagnac)白亜質の土壌で繊細,優雅な香りのブランデーを産む。
Aオー・タルマニャック(Haut・Amagnac)白亜質と粘土質の土壌。やや平凡な風味のブランデーになる。
Bテナレーズ(Tenareze)腰が強く,香りも高いブランデーができる。
アルマニャックの場合,同一区域内で生産したブランデーのみを製品化したものは,その区域名を表示できる。
コニャックやアルマニャツクのラベルには,スリースター,V.S.O.P.,ナポレオン(NAPOLEON),X.O.などの表示で熟成の度合いを示している。熟成期間について、フランスでは,コント(Compte)という単位を用いている。コントの数え方は,コニャックではブドウ収穫の翌年4月1日から,アルマニャックでは翌年5月1日から1年間をコント0とする。次の年の4月1日から(5月1日から)コント1になる。さらに次の年にはコント2になる,というように数えていく。したがってコント5のブランデーは,コニャックではブドウ収穫の翌年4月1日から最短で60ヵ月超,最長で72ヵ月以下の熟成期間を経ていることになる。
このコントと表示の関係は,スリースターではコント2(いわゆる3年物),V.S.O.P.やReserveではコント4以上,NAPOLEON,X.O.ではコント6以上のブランデーを使用することになっている(いずれもブレンドされたブランデーのもっとも若いもののコントで表示する)。コント7以上の表示には規定がない。ただし,これは法的に規制された下限で一般的には,もっと長期に熟成したブランデーが使用されているようだ。
3.その他のフランス産グレープ・ブランデー
コニャック,アルマニャック以外の地域で生産されるグレープ・ブランデーは,フレンチ・ブランデー(French Brandy〕と総称されている。主として連続式蒸留機で蒸留され,熟成期間も短い製品が多い。
フランスでワイン用ブドウの絞りかすからつくるブランデーは,オー・ド・ヴィ・ド・マール(Eau・de-viedemarc)と呼ばれ,ブルゴーニュ,シャンパーニュ,アルザスなど有名ワイン産地で生産されている。蒸留は,主として単式蒸留器で行なわれており,長期の樽熟成を経た後,製品化されている。
4.ドイツのグレープ・プランデー
ドイツのグレープ・ブランデーは,ブラントヴァイン(Bramtwein)と呼ばれ,そのうち,85%以上をドイツ国内で蒸留したものは,ヴァインブラント(Weinbrant)として区別され,高級品扱いされている。いずれも6ヵ月以上樽熟成させることが義務づけられ,1年以上熟成させたものは,ウアアルト(Uralt)と表示できる。ドイツのブランデーは,一般的にライトな香昧を特徴としている。
5.イタリアのグレープ・プランデー
イタリアのグレープ・ブランデーは,単式蒸留器と.連続式蒸留機を併用しているメーカーが多く,重厚な風味に特徴がある。また.ワイン用ブドウの絞りかすを蒸留したグラッパ(Grappa)は,フランスのオー・ド・ヴ・・ド・マールに当たるブランデーだが,樽熟成をせずに,無色透明のまま製品化される。
6.日本のグレープ・プランデー
わが国のブランデーの本格的な生産は,昭和10年(1935年)頃から始まったが,昭和30年代以降,品質の向上とともに生産量も大きく伸びている。日本のブランデーは,酒質がライトで繊細な風味に特徴がある。
フルーツ・ブランデー(Fruit Brandy)
フルーツ・ブランデーの主要な産出国は,フランスとドイツ、原科を破砕,発酵させ,蒸留してつくる製法と,原料をアルコールに浸漬してから蒸留をする製法がある。フランスではどちらもオー・ド・ヴィと総称するが、ドイツにおいては前者の製法でつくられたフルーツ・ブランデーを〜ワッサー(〜Wasser),後者を〜ガイスト(〜geist)と呼んで区別している。樽で熟成させるものもあるが,フルーツ・ブランデーの多くは,蒸留した後,タンクて味を憤らして製品化しており,無色透明のものがほとんど。
主なフルーツ・ブランデーには,次のようなものがある。

(リンゴ)カルバドス(Calvados),アップル・ジャック(AppleJack)
リンゴを発酵させ,シードル(Cidre・英語でサイダーCider)をつくり,蒸留する。主な産地は,フランス北部とイギリス,アメリカ。フランスではオー・ド・ヴィ・ド・シードル(Eau・de-viedecidre)といい,北部ノルマンディーが生産の中心。特にカルバドス地方のオー・ド・ヴィ・ド・シードル・ド・カルバドス(Eau・de.vie de cidre de Calvados)は,世界的にも著名。単式蒸留器で蒸留し,熟成期間も3年程度と比較的短い。アメリカ産のアップル・ブランデーは,アップル・ジャック(Apple Jack)と呼ばれる。同じアップル・ジャックでも,イギリスのものは,サイダー用などのリンゴのかす取りブランデーを指している。
(サクランボ)キルシュ(Kirsch),キルシュワッサー(Kirschwasser)
フランスのアルザス地方,ドイツのシュヴァルツワルト地方,スイスが.主産地。
フランスではオー・ド・ヴィ・ド・スリーズ(Eau-de-vie de cerise)が正式な呼び名だが,一般にはドイツ語の呼び名キルシュ(Kirsch)が使われている。キルシュとは,サクランボの意。原料のサクランボを破砕,発酵させ,蒸留する。
(スモモ)ミラベル(Mirabelle),スリボビッツ(Slivovitz),クエッチェ(Quetsch)
黄色西鮮プラム(スモモ)を原料にしたブランデーは,フランス北部,ドイツ,東欧諸国が.主産地。フランスのオー・ド・ヴィ・ド・ミラベル(Eau・de-vie de mirabelle)は無色透明だが,東欧諸国でスリボビッツ(Slivovitz)と呼ばれる製品には,樽熟成による黄色または褐色に着色したものがある。また,バイオレット・プラムを原料にしたフルーツ・ブランデーも,フランスでオー・ド・ヴィ・ド・クエッチェ(Eau・de-vie de quetsch)と呼ばれて生産されている。
(イチゴ)フレーズ(Fraise)
フランス名オー・ド・ヴ'イ・ド・フレーズ(Eau-de・vie de fraise)。
(ウイリアム種洋梨) ポワール(Poires)
オー・ド・ヴィ・ド・ポワール(Eau-de-vie de poires)と呼ばれ,フランスが主産地。
(木イチゴ)フランボワーズ(Framboise),ヒンベアガイスト(HimbeergeiSt)
フランス(オー・ド・ヴィ・ド・フランボワーズEau-de-vie de framboise),
ドイツ,スイス(ヒンベアガイストHimbeergeist)が主な産地。
(あんず)アプリコーゼンガイスト(Aprikosengeist)

ジン(Gin)
ジンの歴史

ジンは,1660年,オランダのライデン大学医学部教授フランシスクス・シルビウス(Franciscus Sylvius この名前は,当時の学者が用いていたラテン語の通称で,本名,フランツ・ド・ル・ボエ Franz de le Boe)によって開発された。
シルビウスは,熱病の特効薬をつくろうとして,利尿効果のあるジュニパー・ベリー(ねずの実)をアルコールに浸漬して蒸留した。医学者シルビウスの意図とは別に,この薬用酒はむしろ,さわやかなアルコール性飲料として評判になり,ジュニパー・ベリーを意味するフランス語ジュニエーブル(Genievre)からジュネバ(Geneva)と呼ばれて,オランダを代表する酒となった。
ジュネバは,オランダ商人の手で世界各地に広がっていったが,特にイギリスでは英語風にジン(Gin)と呼ばれて一大流行した。1689年にオランダから英国王、に迎えられたウイリアム3世(オレンジ公ウイリアム)の影響もあって,爆発的な人気を得た。18世紀前半のイギリスでは,「ジンの時代」と呼ばれるほど庶民層にジンが飲まれ,未成年者や女性も巻き込んださまざまな悲劇が生まれている。
イギリスでは,当初,飲みやすくするため砂糖で甘味付けされたオールド・トム・ジン(Old Tom Gin)が好まれていたが,19世紀後半になると,連続式蒸留機によるすっきりとした風味のドライ・ジン(Dry Gin)が登場してジュネバを圧倒,世界的にもドライ・ジンが主流になった。
ジンの種類
ジンは,大別するとオランダ・タイプ(ジュネバ)とイギリス・タイプがある。
イギリス・タイプの代表的なものはドライ・ジンで,その他に1〜2%の甘味を付けたオールド・トム・ジンや,香りの強いプリマス・ジン,フルーツの香りを付けたフレーバード・ジンなどがある。またドイツにはシュタインヘーガーと呼ばれるジンがある。
1.ドライ・ジン(Dry Gim)
現在では,単にジンといえばドライ・ジンを指す。主産地の名を採ってロンドン・ジン(London Gin)とも呼ばれる。トウモロコシ,大麦麦芽,ライ麦などを糖化・発酵させた後,連統式蒸留機で蒸留し、高アルコール度のグレーン・スピリッツをつくる。このグレーン・スピリッツをジュニパー・ベリーを主体とする香味原料とともに単式蒸留器で再蒸留するが,それには二つの方法が採られている。ひとつは.グレーン・スピリッツと香味原料を混ぜ合わせ,単式蒸留器で蒸留する。
他は,単式蒸留器の上部に取り付けたジン・ヘッドと呼ばれる上下が網になった円箇の中に香味原料を入れ,蒸留されてくる蒸気を通して香味成分を留出する方法。
ドライ・ジンの香味付けには,ジュニパー・ベリーの他にコリアンダー,アニス,キャラウェイ,フェンネル,カルダモンなどの種子、アンジェリカなどの根,レモン,オレンジの果皮,肉桂などが用いられているが,どの原料をどんな割合で使用するかによって,風味の異なるドライ・ジンがつくられている。さわやかでライトな香味は,カクテル・ぺ一スとして重用される。

2.ジュネバ(Geneva)

オランダ・タイプのジンは,ジュネバ,イエネーフェル(Jenever),ダッチ・ジュネバ(Dutch Geneva),ホランズ(Hollands),スキーダム(Schiedam)などと呼ばれる。大麦麦芽,トウモロコシ,ライ麦などを糖化,発酵させ,伝統的な単式蒸留器で蒸留する(この段階でもう一度蒸留する製品もある)。この蒸留液(グレーン・スピリッツ)にジュニパー・ベリーやキャラウェイ・シード,オレンジの果皮,その他香草類を加え,さらにもう一度単式蒸留器で蒸留する。香味が濃厚で,麦芽の香りが残っている。カクテル・べ一スよりは、強く冷やして,ストレートで濃い風味を楽しむ飲み方が多い。
3.プリマス・ジン(Plymouth Gin)
18世紀以来,イングランド南西部のプリマスでつくられている香りの強いドライ・ジン。ドミニコ派の修遣院でつくったのが始まりといわれる。
4.オールド・トム・ジン(0ld Tom Gim)
現在は,ドライ・ジンに2%の砂糖を加えて製品化する。基本的な原科・製法はドライ・ジンと変わらない。
5.シュタインヘーガー(Steinhager)
ドイツでつくられるオランダ・ジン系のジン。ドイツのウエストファーレン州のシュタインヘーゲン村で生まれたことから,この名前がある。製法は,ジュニパー・ベリー自体を発酵,蒸留してジュニパー・ベリーのスピリッツを得る。これをグレーン・スピリッツとブレンドし,単式蒸留器で再蒸留する,といった独特な方法が採られている。柔らかな風味が特徴。
6.フレーパード・ジン(Flavored Gin)
ジュニパー・ベリーの代わりにフルーツなどで香りを付けた甘口のジン。日本,アメリカではリキュールとして扱っているが、ヨーロッパではジンの一種として扱うことが多い。スロー・ジン(Sloe Gin),オレンジ・ジン(Orange Gin),レモン・ジン(Lemon Gin),ジンジャー・ジン(Ginger Gin)などがある。


ウオツカ(Vodka)
ウオッカの歴史

ウオッカの古い呼び名は,ズィズネーニャ・ワダといい,「生命の水」という意味を持っていた。16世紀ロシアのイワン雷帝の時代に,このワダ(Voda 水)からVodka,ウオッカと呼ばれるようになった,とされる。ウオッカの歴史は,12世紀になって最初の記録が見られるといわれるが,詳しいことはわかっていない。11世紀のポーランドで生まれたという説もある。原料は,ライ麦のビールや蜂蜜酒を蒸留したのではないか,と考えられており,連続式蒸留機が出現する以前は簡素な単式蒸留器で蒸留していたから,雑味も多く,香草によって香りが付けら
れることも多かったようだ。
17〜18世紀頃のウオッカは,主としてライ麦を原料に使っていたようだが,18世紀後半からトウモロコシ,ジャガイモなども使われるようになった。1810年,ペテルスブルグのアンドレイ・アルバーノフという薬剤師が,臼樺の炭の活活性作用を発見,これをウオッカの濾過に利用する技術を開発したのはピョートル・スミルノフだと伝えられている。独自の濾過技術の確立と,19世紀半ばに蒸留精度の高い連続式蒸留機が登場したことにより,酒類の中で,ひときわピュアな風味のウオッカの個性が固まった。
ウオッカがロシア以外の国でも製造,飲酒されるようになったのは,1917年のロシア革命以後のこと。ロシアから亡命した白系ロシア人は,亡命先の国々でウオッカを製造するようになった。1933年,禁酒法が廃止されると,アメリカにおいてもウオッカ製造が盛んになった。1939年頃からカリフォルニア州を中心にウオッカをフルーヅ・ジュースで割ったロング・ドリンクが飲まれ始めた。さらに1950年代に入ると,ウオッカの中性的な性格がカクテル・べ一スとして評価され,爆発的なブームになった。
ウオッカの製法は,ライ麦,大麦,小'麦,トウモロコシなどの穀類やジャガイモ
などを麦芽で糖化・発酵させ,連続式蒸留機で蒸留,アルコール分85%以上の純度の高い蒸留酒をつくり,それを白樺の活性炭などの炭素の層をゆっくりと通過させる。これによって,無色透明,酒類の中でもっとも雑味のない酒が生まれてくる。
原料はもちろん・蒸留装置の構造,濾過時の炭素の層の性質と厚さ,そして炭層の通過速度などの差が品質に現れている。
現在,ウオッカの主要産地は,ロシア,バルト海沿岸諸国,ポーランド,フィンランド,アメリカ,カナダなどで,それぞれの国の伝統に基づくさまざまな原科が使われている。甲類しょうちゅう(ウオッカとの違いは,白樺の活性炭で濾過しないこと)を持つ日本でも,独自のウオッカを生産している。
ウオッカの種類
レギュラー・タイプのウオッカ(アルコール度数によっていくつかに分けられる)と,さまざまな香りを付けたフレーバード・ウオッカ(Flavored Vodka)
に大別できる。フレーバード・ウオッカは,主としてロシアおよびバルト海沿岸諸国でつくられており,以下のようなものがある。
ズプロフカ(Zubrowq)茅の一種の牧草であるズブロフカ草(英語ではバッファロー・グラスという)の香りを付けたウオッカ
ザペケンカ(Zapekenka)ウクライナ地方の薬酒を配合
ナリウカ(Nalivka)ウオッカにさまざまなフルーツを浸漬してつくる
ヤーゼビアク(Jazebiak)トネリコの赤い実を浸漬したピンク色のウオッカ
スタルカ(Starka)クリミヤ地方の梨や,リンゴの葉を浸し,少量のブランデーを加える
レモナヤ(Limomaya)レモンの香りを付けたレモン・ウオッカ
ペルツォフカ(Pertsovka)赤トウガラシとパプリカで風味を付けたペッパー・ウオッカ
オホートニチヤ(Okhotonichya)ジンジャー,グローブ,ジュニパー・ベリーなどの香りを付け,オレンジとレモンの皮で苦みを付けたリキュール・タイプのウオツカ


ラム(Rum)
ラムの歴史

ラムは,サトウキビ(Sugar cane)を原料とする蒸留酒であり,遅くとも17世紀には,西インド諸島でつくられていた。サトウキビは,1492年,クリストファー・コロンブスの新大陸発見後,南欧のスペインから持ち込まれた,といわれる。
ラムは,通常,サトウキビから砂糖の結晶を取ったあとの糖蜜(モラセズ molasses)からつくられるが,サトウキビの絞り汁を水で薄めて発酵させてつくることもある。西インド諸島の砂糖工業の発展とともに,ラムの蒸留も.盛んになった。
18世紀から19世紀にかけて,ヨーロッパ諸国でもラムが飲まれるようになり,特にこの時代に大活躍したイギリス海軍では,水兵への支給品として欠かせない酒だった。現在も,ラムには「海の男の酒」といったイメージが濃厚にある。また,奴隷売買にまつわる三角貿易の重要な商品とされたことも,事の善悪は別にして,ラムの普及を促す結果になった。
西インド諸島生まれのスピリッツを,なぜラムと呼ぶようになったのか。語源については,いくつかの説があるが,この酒を飲んだ酒インド諸島の人々が酔って興奮(ランバリオン Rumbullion)したことから名付けられた,という説が広く受け入れられている。Rumbullionの語頭のRumをとってラムと呼んだ,というものだ。他には,砂糖を意味するラテン語のサッカラム(Sacchamm)からきた,という説もある。
ラムの種類
ラムは,風味と色によって分類される。風味による分類ではライト・ラム,ミディアム・ラム,ヘビー・ラム,色で分ければ,ホワイト・ラム,ゴールド・ラム,ダーク・ラムとなる。
1.ライト・ラム(Light Rum)
カクテル・べ一スとして,もっとも頻繁に使われるライト・ラムは,1862年,当時キューバにあったバカルディ社によって初めてつくられた。現在では,キューバの他プエルト・リコ,バハマ,メキシコなどが主産地になっている。
製法は,糖蜜に純粋培養した酵母と水を入れて発酵させ,連続式蒸留機で蒸留する。原料の風味を残すために,蒸留精度は95度未満に抑えられている。これに水を加えてタンクで熟成するか,内面を焦がしていないオーク樽で貯蔵・熟成した後,活性炭などの層を通して濾過する。
2.ミディアム・ラム(Mediom Rum)
ヘビー・ラムとライト・ラムの中間的なタイプ。ラム本来の香味となめらかな口当たりで,カクテル・べ一スとしても用途が広い。
糖蜜に水を加えて発酵させ,上澄み液だけを蒸留(単式蒸留器,連続式蒸留機の双方が使われているが,旧イギリス領の国では単式蒸留器が多いようだ)し,樽で貯蔵する。ガイアナ(旧英領ギアナ),マルチニック,ジャマイカ・ドミニカなどで生産されている。
3.ヘビー・ラム(Heavy Rum)
ラムのなかで,もっとも風味が豊かなタイプで,色も濃い褐色をしている。
基本的な製法は,発酵液を単式蒸留器で蒸留し,バーボンと同じく内部を焦がした樽で3年以上熟成する。発酵段階で風味に特徴を持たせるため,メーカーによってさまざまな方法が採られている。たとえば,糖蜜を2〜3日放置して酸発酵させ,これに前回蒸留したときの残りの津(ダンダー Dunder)や,サトウキビの絞り殻(バガス Bagasse)を加えて発酵させる。アカシアの樹液やパイナップルの絞り汁を加えることもある。
ヘビー・ラムではジャマイカ産のものが有名だが,マルチニック,デメララ,ニュー・イングランド,トリニダッド・トバゴなどでも生産されている。
4.ホワイト・ラム(White Rum)
淡色,または無色のもの。シルバー・ラム(Silver Rum)と呼ぶこともある。
通常は樽貯蔵したラム原酒を活性炭拠理して雑味を除き,無色透明にする。
5.ゴールド・ラム(Gold Rum)
ダーク・ラムとホワイト・ラムの中間的な色で,アンバー・ラム(Amber Rum)と浮ばれることもある。ウイスキーやブランデーの色調に近い。
6.ダーク・ラム(Dark Rum)
色調が濃褐色で,ジャマイカ産のものに多い。
7.その他のラム
サトウキビの絞り汁を発酵,蒸留したブラジルのビンガ(Pinga)や,南ヨーロッパ、南アメリカ諾国で欲まれているサトウキビ原料のスピリッツ,アグアルディエンテ(Aguardiente)もラムの一種と見られている。


テキーラ(Tequila)
テキーラは,アガベ・アスール・テキラーナ(Agave Azul Tequilana)という竜舌蘭の一種を発酵,蒸留したメキシコの酒。アガベは,マゲイ(Maguey)とも呼ばれるヒガンバナ科の常緑多年生草で、8〜10年生育した直径70〜80cm,重さ30〜40kgの球茎を利用する。
アガベには,アスール(青という意昧)・テキラーナの他にアガベ・アメリカーナ(Agave Americana),アガベ・アトロビレンス(Agave Atrovirens)といった品種があるが,こちらはメキシコで古くから飲まれてきた醸造酒であるプルケ(Pulque)の原料として使われることが多い。
メキシコでは,一般にアガベを蒸留した酒をメスカル(Mezca1)と呼んでいるが,ハリスコ州(Jalisco)テキーラ村を中心とした特定地域で栽培したアガベ・アスール・テキラーナを特定地域で蒸留したものに限り,テキーラと称することが許される。この法的規制は,フランスのコニャックやアルマニャックなどに適用されているAC法(原産地呼称法)に似ている。
法律で定められたテキーラの特定地域は,メキシコ西部のハリスコ州全域,ミチョアカン(Michoacan〕,ナヤリット(Nayarit)両州の一部となっている。アガベ・アスール・テキラーナを原料に使っても,法定地域以外の場所で製品化したものはテキーラと名乗ることはできず,ピノス(Pinos)という名称で販売されている。
メキシコに蒸留技術が伝えられたのは,16世:紀になって,この地を占領,支配したスペイン人によってである。現在のテキーラの製法は,畑で切り取って葉を落としたアガベの球茎を.工場に運び,半分に割って大きな加圧釜に入れ,蒸し煮する。
蒸し煮することでアガベの球茎のイヌリンが分解し,果糖に変わる。これをローラーで被砕して搾汁し,タンクに入れて酵母を加え,発酵させる。蒸留は,単式蒸留器で2回蒸留し,アルコール度数50〜55度の蒸留液を得る。貯蔵は,ステンレス・タンクでの短期貯蔵がほとんどで一部をオーク樽に人れて熟成させる。
テキーラの種類
テキーラは,熟成の程度によって,大きく3つのタイプに分けられる。
1.ホワイト・テキーラ(White Tequila)
テキーラ・ブランコ(Tequila Blanco),シルバー・テキーラとも呼ばれる。
無色透明でシャープな香りカ特徴。本来はまったく熟成させないが,3週間ほど樽貯蔵し,その後,活性炭の層に通して,無色,マイルドに精製したものもある。
2.ゴールド・テキーラ(Gold Tequila)
テキーラ・レポサド(Tequila Reposado)ともいう。蒸留後2ヵ月以上,樽で貯蔵熟成させるため薄黄色をしており,わずかに樽材の香りを含む。
3.テキーラ・アネホ(Tequila Afiejo)
1年上の樽貯蔵が法規で義務づけられている。テキーラらしい強靱さ,鋭い芳香は薄れ,ブランデーに似たまろやかな風味が生まれている。アネホは,スペイン語で「古い」という意味。


アクアビット(Aquavit)
アクアビットは,ジャガイモを,主な原科とする蒸留酒で,北欧諸国の特産。ノルウェーやドイツはAquavit,デンマークはAkvavit,スウェーデンは両方の表記を採用している。どちらにしても,語源は,ラテン語のAquavitae(アクアヴィタエ 生命の水)からきている。
アクアビットに関する最古の記録は1467年から76年にかけての「ストックホルム市財政報告書」に見られる。当時のアクアビットは,ドイツから輸入したワインを蒸留したもので,いわば,ブランデーだったようだ。16世紀末に穀物が使われるようになり,新大陸原産のジャガイモが.主原料になったのは18世紀の頃とされる。
現在は,ジヤガイモを糖化酵素または大麦麦芽で糖化し,発酵させ,連続式蒸留機で蒸留する(蒸留精度は95%以上と高い)。このスピリッツに,キャラウェイ,フェンネル,アニス,カーダモン,ディルなどの香草類を加え,もう一度蒸留する。
香草類に何を使うかによって,ブランドごとの個性が出てくる。製法的には,ジンによく似ているが,ハーブの香りはジンよりも強い。
通常,アクアビットは樽貯蔵しないで製品化されている。が,一部にはリニエ・アクアビット(Linie Aquavit)のように,樽で熟成させ,黄褐色を帯びた製品もある。リニェ・アクアビットとは,かつて北欧から南の国へ赤道(Linie)を越えて航海させたアクアビットのこと。樽に詰めた新酒が,航海を終えて帰ってくるまでに風味が向上するのを知った人々は,わざわざアクアビットに赤道越えの船旅をさせてから売り出した,という。


コルン(Korn)
ライ麦や小麦,大麦,ソバなどの穀類を原料とするドイツ独特の蒸留酒。コルンブラントヴァイン(Kombrantwein 穀物のブランデー)が縮まって・コルンとなった。Kornとは,穀物という意味のドイツ語。単式蒸留器で蒸留され、貯蔵されずに,製品化されることが多いが,貯蔵,熟成させたものもある。クセのないまろやかな味で、アルコール度数は32度以上と国内法で規制されている。また,ドッペルコルン(Doppel korn Doppleは,ダブルの意味)のアルコール度数は,38度以上とされている。産地は,ドイツ北西部に集中しており,小規模な蒸留業者が約3,000軒もある,といわれる。
ドイツでは,コルンのようにアルコール度数が高いホワイト・スピリッツをシュナップス(Schnapps)と呼んでいる。他の北欧諸国でも同様だが,蒸留酒全般を指す用語として使われることもある。


アラック(Arrack,Arak)
アラックは,東南アジアから中近東にかけてつくられている蒸留酒。アラックの語源は,アラビア語でジュース,汁を意味するアラク(Araq)だとする説が有力で表記もArack(アラック),Arak(アラク),Arraki(アラキ),Raki(ラキ)などがある。日本では,阿刺吉,阿刺木酒などと呼ばれ,江戸時代の南蛮酒の代表的なものだったという。
当初は,ナツメヤシ(デーツ Date Palm)の実の汁を発酵,蒸留させてつくっていたらしいが,現在では、産地によって,ヤシの実の汁,糖蜜,モチ米,キャッサバなど,多様な原料が使われている。


しょうちゅう
しょうちゅう(焼酎)は,わが国の酒税法上、,甲類と乙類に分類されている。
しょうちゅう甲類は,アルコール含有物(糖蜜を発酵させたものが多いが,イモ類や穀類も糖化して使われる)を連続式蒸留機で蒸留したものでアルコール度数36度未満のもの。
しょうちゅう乙類は,アルコール含有物を主として単式蒸留器で蒸留したもので、アルコール度数が45度以下のもの。本格焼酎とも呼ばれるしょうちゅう乙類は,蒸留法から原料の風味が残り,多彩な個性を持っている。また,主原料の違いで、泡盛、もろみ取りしょうちゅう,かす取りしょうちゅうに分類することができる。
沖縄県特産の泡盛は,黒麹菌を繁殖させた米麹でつくるしょうちゅう。カメで長期熟成したものは古酒(クース)と呼ばれる。
もろみ取りしょうちゅうは,米麹のもろみに穀類,イモ類,黒糖蜜などを混ぜ、発酵,蒸留したもの。熊本の米しょうちゅう,壱岐や福岡の麦しょうちゅう・宮崎のソバしょうちゅう,鹿児島のイモしょうちゅう,奄美大島の黒糖しょうちゅうなどが知られている。
かす取りしょうちゅうは,清酒の絞りかす(酒粕)にもみ殻を混ぜ、蒸気を通してアルコールを取り出したもの。


リキュール(Liqueur)
リキュールは,スピリッツに果実,花,ハーブ,スパイスなどの香味を移し,甘味料や着色料を加えた混成酒。一般的に,同じ混成酒でもワインなど醸造酒をベ一スにしたものは,ベルモット,サングリアなどと呼ばれて,リキュールには含まないとされている。
日本の酒税法では,「酒類と糖類,その他のものを原料とし,エキス分が2度以上で,その他の酒類に分類されないもの」をリキュールとしている。酒税法でいうエキス分とは「温度15Cで,原容量100立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう」と規定されており,重量パ一セント表示になっている。
アルコール度数の場合は容量パーセントなので,注意が必要だ。フランスでは,アルコール分15%以上,エキス分20%以上のものをリキュールとしており,エキス分の含有量がアルコール分より多いものについて,クレーム(Creme)という名称を冠して呼ぶことがある。
リキュールの歴史
リキュールは、不老長寿の霊薬を目指した錬金術師たちによって,彼らが蒸留し
たアクアビタエ(Aquavitae 生命の水=蒸留酒)に薬草や香草を加えてつくったのが起源とされている。植物の薬効成分を溶け込ませるのでこの酒をラテン語でリケファセレ(Liquefacere 溶ける)と呼んだのが,現在のリキュールの語源となった。
中世ヨーロッパでは,リキュールの製法を錬金術師から継承した修道院の僧侶によって,さまざまな薬草を使ったリキュールが生まれた。現在でも,この時代の基本的な製法を伝えるリキュールがつくられており,修道院リキュール,モンクス・リキュール(僧侶のリキュール)と呼ばれている。大航海時代が始まると,新大陸やアジアの香辛料や砂糖が入手できるようになって,リキュールはさらに多様化していった。貴族や上流階級の間では,薬酒としてだけでなく,甘口の美酒としてリキュールが盛んに飲まれた。16世紀の初め,イタリア・フィレンツェの名家メディチ家からフランスのアンリ2世(HenriU)に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシス(Catherine de Medicis)は,多数のリキュールづくりの専門家をイタリアから連れていった,という。18世紀、太陽王と呼ばれたルイ14世(Louis ]W)の時代になると,オレンジなどフルーツの香味を主にしたリキュール(キュラソーなど)が生まれ,「液体の宝石」とも呼ばれる華麗で多彩なリキュールの世界を形づくっていった。
連続式蒸留機が開発された19世紀半ば以降,高アルコール度数のスピリッツが得られるようになって,リキュールの香味はいっそう洗練され,さらに新たなリキュールの開発が活発に行なわれた。現在も,多彩な魅力を持った多数のリキュールが誕生している。
リキュールの製法
リキュールの製造法は,蒸留法,浸出法,エッセンス(Essence)法の3つに大別できるが,これらの方法を組み合わせてつくる場合も多い。
蒸留法=原料をスピリッツの中に浸し,そのまま原料ごと蒸留する方法と・浸出させた液を蒸留する方法がある。いずれも蒸留後,甘味と色を付ける。主として香草類,柑橘類の乾した皮などを原料に使う。熱を加えるため,ホット(Hot)法ともいう。
浸出法=原科をスピリッツ,または加糖スピリッツに浸し,エキス分を抽出する。主に蒸留時の熱で香味や色が変質する可能性のある果実類などに使う方法。コールド(Cold〕法ともいう。エッセンス法=香料精油(エッセンス)にスピリッツを加え,甘味と色を付ける。
リキュールの種類
リキュールの世界は,きわめて多彩な広がりを持っている。ここでは,カクテルに使用される頻度の高いものを中心に整理.しておく。原料の類似したリキュールを香草・薬草(ハーブ・スパイス)系,果実系,種子・核系,その他のリキュールに大別してある。
1.香草・薬草系リキュール
●アニゼット(Amisette〕アニス・シードにコリアンダーの種子,レモン果皮,シナモンなどで風味を付けた甘口リキュール。アニス(Anis,Anise)と呼ばれることもある。
●パスティス(Pastis)アニス・シード,甘草(リコリス)などを使い,アブサンの製造禁止以後,代用酒としてつくられている。フランスのペルノー,リカール,ギリシャのウゾ,スペインのアニス・デル・モノなどが知られている。水を加えると白濁する性質がある。
●ベネディクティン(Benedictine)フランス北部にあるベネディクト派の修道院で1510年に生まれたとされている。現在の製品は,1863年に企業化されたもの。ジュニパ一・ベリー,アンジェリカの根,シナモン,クローブ,ナツメッグ,バニラ,紅茶,蜂蜜など27種の材料を使用しているという。ベネディクティンB&Bは,ベネディクティン60%,コニャック40%の割合でブレンドしたもの。
●シャルトリューズ(Chartrpse)1764年以降,フランス南東部のシャルトリューズ修道院でつくられていた処方に従い、現在は民間企業で製造されている。いわゆるモンクス・リキュールの代表的なもので,多種の薬草類をグレープ・スピリッツに浸漬して蒸留,数年間熟成させる。グリーン(アルコール度数55度),イエロー(40度),エリクシル・ヴェジェタル(71度).オレンジ(フルーツ風味を強調した新タイプ)などがある。
●イザラ(Izarr)シャルトリェーズに似たリキュールで,グリーン(51度),
イエロー(40度)がある。南フランス・バイヨンヌで生産されている。
●カンパリ(Campari)グレープ・スピリッツなどにビター・オレンジ・ピール,キャラウェイ・シード,コリアンダー・シード,りんどうの根などを浸出させてつくる。1860年,トリノ市でガスパーレ・カンパリ(Gaspare Campari)によってつくられた。イタリアを代表するアペリティフであり,鮮やかな真紅のビター・リキュールだ。
●アンゴスチュラ・ビターズ(Amgostura Bitters)芳香のあるビターズ。アンゴスチュラ(Angostura)の樹皮を主原料に1O数種の草根木皮のエキスをスピリッツに浸出してつくる。アンゴスチュラとは,南米産みかん科の樹。
●オレンジ・ビターズ(Orange Bitters)ビター・オレンジの皮を主原料に10数種の草根木皮のエキスをスピリッツに浸出,熟成させてつくる。
●アメール・ピコン(Amer Picon)オレンジの皮,りんどうの根,キニーネの樹皮などを原料につくられる。アメールとはフランス語で``苦い"という意味。
●ウンダーベルグ(Umderberg)40数種のハーブ、スパイスをスピリッツで浸出,熟成させたドイツの苦味酒。20mlの小瓶入り。
●ドランブイ(Drambuie)60種のスコッチ・ウイスキーをブレンド。それにヘザー・ハニー(Heather Honey ヒースの花から採れる蜂蜜)と種々の草木の香味を配している。スコッチ・べ一スの香草系リキュールには,ロッカン・オラ(Lochan Ora),グレン・ミスト(Glen Mist),グレイヴァ(Glayva)などがある。また,アイリッシュ・ウイスキー・べ一スには,アイリッシュ・ミスト(Irish Mist)がある。
●ガリアーノ(Galliano)40種以上の薬草,香草をスピリッツに浸漬し,一部は蒸留してブレンドする。アニス,バニラ,薬草などの香りが調和した黄色の甘口リキュール。20世紀初頭,イタリア北部のリヴォルノでつくられ,エチオピア戦争の英雄ジュセッペ・ガリアーノ将軍の名を酒名にした。
●サンブーカ(Samhuca)スイカズラ(英名エノレダー Elder,イタリア名サン
ブーカ・ニグラ Sambuca Nigra)を主原料にアニス・シード,リコリスなどを
グレープ・スピリッツで浸出した,無色透明で軽快な風味のリキュール。
●ペパーミント(Peppermint)フランスではクレーム・ド・マント(Creme de Menthe)。ミント(はっか)の葉のエキスを水蒸気とともに蒸留して,ミント・オイルを取り,スピリッツと甘味を加えると,ホワイト・ペパーミント(White Peppermint)。グリーン・ペパーミント(Green Peppermint)は,これにグリーンの色付けをする。
●パイオレット(Violet)すみれの花の色と香りを移し取った美しい紫色のリキュールで、飲む香水とも呼ばれる。すみれの花弁をスピリッツに浸漬して色と香りを抽出し,甘昧を加える。同種のリキュールにパルフェ・タムール(ParfaitAmour完全な愛という意味)がある。
●グリーン・ティ(Green Tea)緑茶風昧の,日本産のリキュール。玉露や抹茶をスピリッツで浸出し,ブランデー,甘昧を加える。
●サクラ(Sakura)桜の花の香りと風味を生かした,優雅な桜色のリキュール。
八重桜の花と若葉から抽出した成分をスピリッツに混ぜ、甘味を加える。
2.果実系リキュール
●キュラソー(Curacao)
ホワイト・キュラソー(White Curacao)は,スピリッツをべ一スにして,ビター・オレンジの果皮を主体に風味付けしたリキュール。ブルー・キュラソー(Blue Curacao),レッド・キュラソー(Red Curacao)・グリーン・キュラソー(Green Curacao)は,ホワイト・キュラソーにそれぞれ色付けをしたもの。オレンジ・キュラソー(Orange Curacao)は果皮の浸漬,ブランデー添加,樽熟成など複雑な工程を経てつくるが,淡いオレンジ色で,風味にも厚みがある。トリプル・セック(Triple Sec)というのは,3倍も辛口というフランス語だが,そんな辛口のものはなく,ホワイト・キュラソーとほとんど変わらない。17世紀末ヴェネズエラ沖のキュラソー島産オレンジ果皮を使って,オランダでつくったのが最初。
●マンダリン(Mandarine)マンダリン・オレンジの果皮を利用して,オレンジ・キュラソーと同様な製法でつくる。
●アプリコット・ブランデー(Aprico Brandy)アプリコット(あんず)の果肉をスピリッツに浸漬し,エキス分を抽出した後,ブランデーと糖分,スパイスを加えてバランスを整える。
●チェリー・プランデー(Cherry Brandy)熟したサクランボをスピリッツに漬け込み,シナモン,クローブなどで風昧を整えた後,濾過して貯蔵・熟成させる。デンマークのピーター・ヒーリングなどが知られている。
●マラスキーノ(Maraschino)イタリア北部のマラスカ種のチェリーを発酵させて蒸留,熟成してスピリッツ,シロップなどを加えてつくる。1821年,イタリアのルクサルド(Luxardo)社が開発した。現在各国でつくられており,フランスではマラスカン(Marasquin)という名で発売されている。
●クレーム・ド・カシス(Creme de Cassis)カシスはフランス語。英語ではブラック・カラント(Black Currant),日本では黒すぐりと呼ばれる。通常,スピリッツにカシスの実を浸漬するコールド法でつくられる。クレーム・ド・フランボワーズ(Creme de Framboise 木イチゴ),クレーム・ド・フレーズ(Creme de Fraiseイチゴ。ストロベリー・リキュールともいう)なども同様な製法でつくられている。
●ピーチ・プランデー(Peach Brandy)桃の味と香りをスピリッツに浸出させ,この酒にブランデーなどをブレンドして味を整える。サザン・カンフォート(Southern Comfort)は,バーボン・ウイスキーをべ一スに,桃をはじめ数種のフルーツ・エキス,甘味をブレンドしたもの。
●ス□一・ジン(Sloe Gin)すももの一種のスロー・ベリー(Sloe Berry)の実をスピリッヅに浸して色や香りを抽出し,甘味を付けた鮮やかなバラ色のリキュール。かつて,イギリスの家庭でジンにスロー・ベリーを浸漬してつくっていたことから,スロー・ジンの名がある。
●メロン・リキュール(Melon Liqueur)日本特産のマスク・メロンを原料にした緑色のリキュール。日本以外でも製造されている。
●バナナ・リキュール(Banana Liqueur)バナナの香昧をスピリッツに移し取った淡黄色のリキュール。フランスではクレーム・ド・バナーヌ(Creme de Banane)と呼ばれる。
近年,トロピカル・フル一ツの風昧を持ったリキュール,ライチのリキュールなど,果実系リキュールのニューフェイスが続々と誕生,カクテルの世界がさらに広がっている。
3.種子・核系リキュール
●アマレット(Amaretto)
アプリコット(あんず)の核をブランデーに浸漬し,エキス分を抽出。その酒に数種類の香草エキスをブレンド、長期間ゆっくりと熟成させた後,甘味を加えて製品化する。特有のアーモンド・フレーバーを持っており,近年,アメリカなどで人気が高まっている。イタリア・ミラノ産のディサローノ・アマレットが最初に発売された製品。
●カカオ・リキュール(Cacao Liqueur)焙煎したカカオ豆をスピリッツに浸漬し,香味成分を抽出した後,ブランデーや甘味を加え、色や香りのバランスを整えた濃い茶色のリキュール。ホワイト・カカオ(White Cacao)はカカオ豆をスピリッツに浸漬させ,香りやエキス分を抽出した後,蒸留する。甘味を加え,風味のバランスを整えて瓶詰めする。こちらは,無色透明のリキュールだ。
●コーヒー・リキュール(Coffee Liqueur)焙煎したコーヒー豆の成分をスピリッツで抽出,バニラ,シロップを加える。フランスでは・クレーム・ド・カフェ(Creme de Cafe),またはクレーム・ド・モカ(Creme de Moka)と呼ぶ。
コーヒー豆の種類,煎り方,べ一スのスピリッツの種類(ブランデー,ラムなどが使われている)などで,微妙に異なった風昧になる。
●ノアゼット(Noisette)へ一ゼルナッツ(ハシバミの実)を主体に・スパイスなどを加えたリキュール。甘いナッティ・フレーバーが特徴。
4.その他(卵,クリーム,高麗人参)のリキュール
●アドヴォカート(Advocaat)エッグ・ブランデー(Egg Brandy)ともいい・原料は,スピリッツ,卵黄,蜂蜜,ブランデーなど。
●クリーム・リキュール(Cream Liqueur)スピリッツ(ウイスキー,ブランデーなど)とクリームにカカオ,コーヒー,バニラなどの香味を加えた新しいタイプのリキュール。近年では,フルーツの香味を配したクリーム・リキュールも登場してきた。
●高麗人参酒(Korean Ginseng Ju)高麗人参は・ウコギ科の植物で古来より漢方医薬として珍重されてきた。この高麗人参をスピリッツに浸漬し,エキス分を抽出した後,熟成させる。独特の香りがある。


ワイン(Wine)
広い意昧でのワインは,果物を醸造した酒全般を指すが,一般的にはブドウからつくった酒をワインといっている。ワインは,現在あるすべての酒類の中で,もっとも古い歴史を持っており,ヨーロッパはじめ新旧の大陸に広がる産地の土質,自然条件,ブドウ品種,栽培法,醸造法などから,きわめて多様な酒質のワインが生まれている。
ワインの歴史
古代オリエント最古の文学書といわれ,紀元前50OO〜4OOO年の出来事を記録しているとされる「ギルガメシュ叙事詩」には,古代シュメール人がユーフラテス川のほとりで赤ワイン,白ワインをつくっていたという記述がある。バビロニアや古代エジプトでも盛んにワインがつくられていたようで,ピラミッドの壁画にブドウ栽培やワイン醸造のようすを描いた絵が残っている。
その後,ブドウ栽培やワインづくりの技術は,フェニキア人によって地中海を渡り,ギリシャ,ローマに伝えられ,ローマ帝国の領土拡大とともにフランスに根を下ろした。さらに,「パンはわが肉,ワインはわが血(キリストの言葉)」とするキリスト教の布教の広がりとともに,ワインは全ヨーロッパに広まった。17世紀に入ってコルク栓が開発され,シャンパンが誕生。18世紀には,蒸留酒を加えたシェリーやポート・ワインも登場して,ワインは大きく発展する。この時代はまた,ヨーロッパ列強の植民地経営により,アメリカ,オーストラリア,南米諸国など新大陸にワインづくりが定着した。
わが国に初めてワインを紹介したのは,16世紀半ば,キリスト教布教のために来日したポルトガルの宣教師フランシスコ・ザビエルだといわれている。が,本格的にワインがつくられたのは明治時代になってからで、明治10年,山梨県に大日本山梨葡萄酒会社が設立されている。以後,青森,北海道,愛知,兵庫・岡山,栃木,長野などでワインづくりが始められた。
ワインの種類
ワインを製造法で分類すると,スティル・ワイン,スパークリング・ワイン,フォーティファイド・ワイン,フレーバード・ワインの4タイプに分けられる。いずれのタイプのワインも,原料ブドウの色素をワインの中に溶出させる度合によって,赤,白,ロゼなどの色になる。また,甘辛の差も,フランスのソーテルヌ(Sautemes)のようにごく甘口のものからきわめて辛口のものまで幅広い。フランス・ボージョレー(Beaujolais)産の新酒のように,つくられてすぐ飲まれるものから,ボルドー(Bordeaux)の赤ワインのように,長年の熟成でようやく飲み頃になるものまで数多くのタイプがある。
1.スティル・ワイン(StillWim)
スティルとは,静かな,つまり無発泡性(notsparkling)という意味でワインの発酵中に生じる炭酸ガスをワイン中にほとんど残さない。ワインのほとんどは,このタイプに属する。
赤ワイン(Red Wine)フランス語ではヴァン・ルージュ{Vin rouge)。黒ブドウの果汁を果皮,果肉,種子と一緒に破砕し,発酵させた後,圧搾機にかけ,果皮,果肉,種子を取り除き,さらに後発酵させ,樽貯蔵する。樽での熟成は一般的に2年以内。熟成したワインは濾過,瓶詰めし,さらに熟成(瓶熟)させる。
白ワイン(White Wim)フランス語では,ヴァン・ブラン(Vinblanc)。ブドウの果皮を除き果汁だけを発酵させる。ほとんどの場合,白ブドウを使用するが,その他のブドウを使うこともある。一般的には樽でなくタンクで熟成させ,フレッシュな風味を生かす製法だが,樽を使う製品もある。通常,熟成期間は,赤ワインより短い。
ロゼ・ワイン(Rose Wine Pink Wime)フランス語では,ヴァン・ロゼ(Vin rose)。赤ワイン同様黒ブドウを果皮,果肉,種子とともに発酵させ,発酵液がピンク色になった頃,果汁を分離し,さらに発酵させる。熟成はタンクで行なうのが一般的。濾過してから瓶詰めし,瓶熟させるが,あまり長い瓶熟は行なわれていない。
2.スパークリング・ワイン(Sparklimg Wim)
泡の立つワインという意味。わが国では発泡性ワインと呼んでいる。フランス,シャンパーニュ地方でつくられるシャンパン(Champagne)が世界的に著名。イタリアのアスティ・スプマンテ(Asti Spumante),スペインのカヴァ(Cava)も近年,高い評価を受けている。シャンパンの製法は,いったんスティル・ワインをつくり,糖分を調整し酵母を加えて瓶に詰め,瓶内で第2次発酵させて炭酸ガスをワインに溶かし、発泡性を持たせる。
3.フレーバード・ワイン(Flavored Wine)
スティル・ワインをべ一スに香草類,果実,蜂蜜などの香味を加え,風味に変化を付けたもので,ベルモット,サングリア,デュボネなどが代表的。混成ワインとも呼ばれる。
ベルモット(Vermouth)白ワインをべ一スに糖分や植物性香辛料,薬草類などの香りを付加してつくる。通常使われるのは,アンジェリカ,ビター・オレンジの皮,カーダモン,フェンネル、ジュニパー・ベリーなど。スイート・ベルモット(Sweet Vermouth)は,カラメルで着色している。スイートとドライ・ベルモット(Dry Vermouth)では使用する薬草の種類も異なる。かつては,フランスでは辛口,イタリアでは甘口のベルモットがつくられており,フレンチ・ベルモットはドライ,イタリアン・ベルモットはスイートとされていたが,現在では両国とも辛口,甘口の両方をつくっている。
デュポネ(Dubonnet)別名,カンキナ・デュボネ(Quinquina Dubomet)。スピリッツを加えたワインにキナ皮などで香り付けして,樽熟成する。
ジンジャー・ワイン(Ginger Wine)ホワイト・ワインにジンジャー(しょうが)を浸漬した後,樽熟成する。イギリスで人気のフレーバード・ワイン。
サングリア(Sangria)サングリアは,ワインにオレンジやレモン果汁などの香味と甘味を加えた飲み物で,古くからスペインで飲まれてきた。
4.フォーティファイド・ワイン(Fortified Wine)
アルコール強化ワインとも訳され,ワインをつくる途中でブランデーなどを添加し,アルコール度数を高めて発酵を止め,甘味を持たせたものや,発酵の終わったワインに,ブランデーなどを添加し,保存性を高めたものなどがある。
シェリー(sherry)スペインの南西端ヘレス(Jerez)地方を中心につくられている。白ワインの熟成中にフロール(Flor 花)と呼ばれる酵母の膜を繁殖させ,独特の風味を付加する。フロールを多く繁殖させた淡色のフィノ(Fino),フロールをあまり付けない濃色のオロロソ(Oloroso),フィノを長く熟成させたアモンティラード(Amontillado)などがあるが、いずれもブランデーでアルコール分を強化する。
その後、樽を数段重ね,下の樽から抜き出したシェリーを上の樽から次々に補充していくソレラ・システム(Solera System)というシェリー独特の方法で熟成し,さらにアルコール分を20%近くに高めて製品化する。
ポート・ワイン(Port Wine)ポルトガルを代表するワイン。ポートという名称は積み出し港のポルト(Porto)に由来している。ブドウを発酵させ,糖度が10度ぐらいになったときにブランデーを加えて発酵を止め,甘味を残す。
ポート・ワインのタイプには,ルビー・ポート(Ruby Port ルビー色の,もっとも一般的なポート・ワイン。樽熟4〜5年),トーニー・ポート(Tawny Port 長年月熟成させたワインをブレンド。トーニーとは,黄褐色という意昧),スペシャル・ブレンデッド・ポート(Special Blended Port ルビー・ポートとトーニー・ポートをブレンド),白ブドウからっくったホワイト・ポート(White Port),作柄の良い年のワインだけを瓶詰した後,数十年,熟成するヴィンテージ・ポート(Vintage Port)などがある。
マデイラ・ワイン(Madeira Wine)ポルトガル領マデイラ島でつくられる。ブドウの果汁を発酵させ,スピリッツを加えてから室温を約50℃に高めた温室(Estufa エストゥファ)に数カ月入れる。この温熟の間に白ワインは淡黄色から暗褐色に色付き,マデイラ特有の芳香を持ってくる。
マルサラ・ワイン(Marsara Wine)イタリア・シシリー島のマルサラ周辺でつくられるマルサラ・ワインは,まず白ワインをつくり,それに6%の補強用ワイン(ブランデーと甘口ワインを混合した液)を添加し,それにブドウの果汁を加えてつくる。色は,ほとんど褐色に近い。マルサラ・ワインのほとんどは甘口だが,辛口のものもある。
ワインの法的規制
ワインは,多数の国で無限ともいえるほど多くの銘柄のワインがつくられている。フランスやドイツなどのようにワイン生産の歴史が古い国では,ワインの公正な取り引の維持,消費者保護などの立場から,ワインを一般のワインと長い歴史の中で確立された産地の個性を重視したワインに分け,それぞれ法的に規制している。
1.フランスのワイン
フランスでは,1970年に制定されたECのワイン法に準拠して,フランス産ワインを日常消費用ワインと限定地域生産上質ワイン(Vinsde Qualite Produits dan une Region Diterminee ヴァン・ドゥ・カリテ・プロテ“ユイ・ダン・ユヌ・レジョン・ディテノレミネ 略してV.Q.P.R.D.)の二つに大きく分類し,それぞ'れ,さらに二つに品質分類している。
日常消費ワイン
Vins de Table(ヴァン・ド・ターブル)産地名が表示されていないワイン。わ
が国では,テーブル・ワインと呼ばれている。
Vins de Pays(ヴァン・ド・ペイ)産地名が表示され,産地の個性を持っている。
地酒としての魅力が評価されている。
V.Q.P.R.D.(限定地域生産上質ワイン)
Appellation d' Origine Vins Delimites de Qualite Superieure(アペラシオン・ドリジーヌ・ヴァン・デリミテ・ドゥ・カリテ・シューペリュール)略してA.O.V.D.Q.S。またはV.D.Q.S.産地指定上質ワイン)生産地,ブドウ品種,最低アルコール度数,栽培・醸造方法などいくつかの規定を満たし,出質検査に合格したワイン。
Vins a Appellation d' Origine Controlee(ヴァン・ア・アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ 略してA.O.C.原産地統制名称ワイン)品質分類上,最高クラスのワイン。A.O.V.D.Q.S.より,さらに厳しい規制が設けられている。有名醸造地のワインのほとんどが含まれる。
A.O.C.(原産地統制名称)には,地方名,地区名,村名(コミューン名)などがあり,統制の範囲が狭くなるほど規制がより厳しくなって,品質も高くなってくる。また,直接にA.O.C.法では規定されていないが,村(コミューン)の中の個々のブドウ園(シャトー)の名前を表示したワインは,村名表示ワインよりさらに上級のワインとされる。ボルドー地方のA.O.C.ワインを例に採ると,次のように順にクラスが上がっていく。
Appellation Bordeaux Contolee(ボルドー地方産のA.O.C.ワイン)
Appellation Medoc Contolee(ボルドー地方メドック地区産のA.O.C、ワイン)
Appellation Pauillac Contolee(ボルドー地方メドック地区ポイヤック村産のA.O.C.ワイン)
Appellation Pauillac Contoleeとシャトー名(たとえばChateau Lafite Rothschi1d)を併記(ボルドー地方メドック地区ポイヤック村のシャトー・ラフィット・ロートシルトで栽培,醸造,瓶詰めしたA.O.C.ワイン)
2.ドイツのワイン
ドイツのワインもフランスと同様にECのワイン法に準拠して,日常消費用ワイン(Deutscher Tafelwein ドイッチャー・ターフェルヴァイン)と限定地域生産上質ワイン(Qualitatswein クワリテーツヴァイン)に区分し,さらに,それぞれを二つに分類するとともに,それらの生産地域を明確に定めている。ただし,ドイツのワインの品質分類の基本は,ブドウの糖度を基準にしており,フランスのように地域による格差はない。
日常消費用ワイン
Deutscher Tafelwein(ドイッチャー・ターフェルヴァイン)ドイツ産日常消費ワイン。ドイツ産テーブル・ワイン。このDeutscher Tafelweinに他のEC国産のワインをブレンドしたものは,EWG-Tafelwein(工一ヴェーゲー・ターフェルヴァイン)と呼んでいる。
Landwein(ラントヴァイン)ターフェルヴァインの中で、産地が限定されているもの。フランス・ワインのヴァン・ド・ペイに相当する。
限定地域生産上質ワイン(Qualitatswein)
Qualitatswein bestimmte Anbaugebiete(クワリテーツヴァイン・ベシュティムテ・アンバウゲビーテ賂してQ.b.A.=クー・べ一・アー)モーゼル,ラインガウ,ラインヘッセンなど11の生産地域が指定されており,ブドウの糖度の下限など厳しい規制がある。ドイツのワインの中では,もっとも生産量が多い。
Qualitatswein mit Pradikat(クワリテーツヴァイン・ミット・プレディカート略してQ.m.P.=クー・エム・ぺ一)肩書付き(格付け)上質ワイン。糖度の下限が高く,一切の補糖を認めないなどQ.b.A.より厳しく規制されており,生産地域もさらに小さな区画に限定されている。Pradikatは,肩書,称号,格付けなどの意味で,これには,収穫時のブドウ果汁の糖度などによって次の6種がある。
Kabinet(カビネット)地域とブドウ品種により定められた糖度を満たしたもの。
Spatlese(シュペートレーゼ)遅摘み熟果を醸造したワイン。
Auslese(アウスレーゼ)房選り特別醸造のワイン。
Beerenauslese(べ一レンアウスレーゼ)完熟した房からさらに過熟した粒を選んで醸造したワイン。
Eiswein(アイスヴァイン)畑で氷結して糖度の高くなったブドウを醸造する。
Trockenbeerenauslese(トロッケンベーレンアウスレーゼ)干しブドウのように乾燥したブドウの粒を選んで嬢造したもので、希少な最高級ワイン。
3.イタリアのワイン
フランスよりもはるかに古い歴史を持つワイン生産国であるイタリアでは,日常消費用のVino da Tavola(ヴィノ・ダ・ターボラ。テーブル・ワイン)とDenominazione di Origine Controllata(デノミナヅィオーネ・ディ・オリジーネ・コントロラータ略してD.O.C.)という原産地統制名称ワインがある。D.O.C.ワインは,産地,ブドウ品種と使用量,栽培法,収穫量,アルコール分など厳しく規制されている。
また,イタリア最高クラスのワインであるDenominazione di Origine Controllata e Garantita(デノミナッィオーネ・ディ・オリジーネ・コントロラータ・工・ガランティータ略してD.O.C.G.)は,保証付原産地統制名称ワインの意味で、D.O.C.ワインよりもさらに厳しく規制され,条件を満たしたワインには国家機関の「品質合格証」が添付される。D.O.C.G.ワインは,市場で特別に高い評価を得ているワインだが,呼称を許された製品は,まだ多くない。
4.スペイン,ポルトガルのワイン
世界一のブドウ栽培面積(170万ha)とフランス、イタリアに次ぐ世界第3位のワイン生産国であるスペインでは,ECのワイン法に準じて日常消費用ワインとは区別してDenominacion de Origen Controlada(デノミナシオン・デ・オリヘン・コントロラーダ原産地統制名称ワイン)を制定,各産地ごとの指定ブドウ品種と使用量,栽培法,収穫量,醸造法など厳格な規制に合致した製品に統制名称を名乗ることを許可している。
また,ポルトガルでも,Designancao de Origen(デジニャンソン・デ・オリジェン原産地統制名称ワイン,略してD.O.)を制定している。D.O.ワインを産出する地域は,VinhoVerde(ヴィーノ・ヴェルデ),Douro=Port(ドウロ=ポート),Dan(ダン)その他がある。
5.アメリカ,オーストラリアのワイン
新大陸に属する比較的新しいワイン生産国であるアメリカ(主としてカリフォルニア)とオーストラリアは,進んだブドウ栽培技術と近代的な醸造法を導入して,近年,評価の高いワインを生産している。両国のワインには,ブドウ品種名を冠したヴァラエタル・ワイン(Varietal Wine)と,ライン,モーゼル,クラレット,バーガンディなどヨーロッパの特定産地のワインのタイプ名を付けたジェネリック・ワイン(Generic Wine)の2種があり,一般には,ヴァラエタル・ワインのほうが上質とされている。
ヴィンテージ(Vintage)
ヴィンテージとは,ブドウの収穫年号のこと。ワインの品質は,原料ブドウの善し悪しによって大きく左右される。同じ産地,同じブドウ品種でも,ブドウの収穫年によって品質が異なってくるので、ヴィンテージごとのブドウの出来ぐあいを知ることは,ワインを正確に評価する手がかりになる。
また,ヴィンテージ・ポート,ヴィンテージ・シャンパンなどという場合は,秀作年のブドウだけを原料にして生産した,収穫年号付き極上ポートやシャンパンを意味している。


ビール(Beer)
ビールは,世界のもっとも広い地域て飲まれ,もっとも多量に消費されている酒だ。また,ワインと同じく,古くから人類の生活に深く関わってきた酒で、その起源は紀元前6000年にまでさかのぼる,といわれている。ロンドンの大英博物館には,紀元前4OOO年頃のメソポタミアでビールがつくられていたことを示すモニュメント・ブルーと呼ばれる板碑がある。紀元前3OOO年頃の遺跡であるエジプトの壁画には,ビール醸造のプロセスが描かれている。当時のビールは,大麦麦芽と小麦を粉砕して水でこね,パン状にしてから水に浸し,自然発酵させていた。
19世紀に入って,ビールづくりは,ルイ・パスツール(Louis Pasteur)の発酵原理の解明や製氷機,冷凍機の発明,下面発酵酵母の開発などにより近代化され,大量生産が可能になり,品質も大きく向上した。
ドイッでは,16世紀に「ビールは,麦芽,ホップ,水だけを原料にしたもの」というビール純粋令が出され,今でも守られている。麦芽,ホップ,水は,ビールづくりの基本になる原料だが,現在では,風味をマイルドにするため,スターチや米などを副材料として使った製品が多くなっている。
ビールの製法
一般的なビールの製法は,大麦麦芽を粉砕し,副原料のコーンスターチなどとともに糖化する。その糖化液(もろみ)を濾過した麦汁にホップ(Hop)を加え,煮沸する。ホップを加えることによって,ビールの濁りの原因となるものがある程度除去され,独特の苦みと芳香が加わる。冷却し,オリを取り除いた清澄な麦汁を発酵タンクに移し,ビール酵母を加えて低温で10日間ほど発酵させる(主発酵)。
これを貯蔵タンクに送って,0℃の低温でゆっくり熟成させる(後発酵)。この熟成によってビールの味と香りカ探まり,炭酸ガスが液の中に溶け込む。十分に熟成したビールは,低温下で仕止げの濾過を行なう。
近年,マイナス4℃以下までビールを冷やし,できた氷の結晶とともに不純物を取り除くアイス・ビール(Ice Beer)の醸造(濾過)法が開発され,ビール中の雑味成分を効率的に析出・除去したスッキリとした味わいで注目されている。
発酵の方法には,上面発酵と下面発酵の2種がある。
1.上面発酵(Top Fermmetation)
上面発酵酵母を使用する,古くからある醸造法。上面発酵酵母は,10〜20℃くらいで発酵し,発酵中に生じる泡と一緒に発酵液の表面に浮かびトがる。スタウト,工ールなどイギリス系のビールには.上面発酵法でつくられているものが多く,ドイツのケルシュ,ヴァイツェンビールなど多くの種類がある。近年,ビールの多様化が著しいわが国でも,上面発酵ビールが相次いで登場している。上面発酵によるビールは,香味成分が比較的多いため香りが豊かだが,雑味がある場合がある。
2.下面発酵(Bottom Fermentation)
下面発酵酵母を使用する。下面酵母はト1O℃と低い温度で発酵させるのに適し,19世紀初め,冷凍機の発明によって大きく発展した。下面発酵酵母は,お互いにくっつき合って沈澱していく性質があり,発酵が進むと凝集して底に沈む。日本や,ドイツのビールのほとんどは下面発酵法でつくられている。熟成期間が長く,まろやかで切れ味のいいビールが得られる。
ビールの種類
生ビール(Draft Beel)タンク内で熟成させたビールを濾過しただけで、熱処理しないビール。
ラガー・ビール(Lager Beel,Lager Bier)ドイツ語のラーガー(Lager 貯蔵庫)からきている。貯蔵室で後発酵(熟成)させるビール。16世紀頃までは,主発酵が終わると出荷されていたが,ラーガーに貯蔵することにより味と貯蔵性が良くなることがわかり,現在,世界のビールの大多数はラガー・ビールになった。
ピルスナー・ビール(Pilsner Beel)チェコスロバキアのピルゼン産の透明な淡黄色ビールで,これに似たアロマを持つビールの代名詞になっている。日本のビールのほとんどは,このピルスナー・タイプ。
黒ビール(Black Beer)濃褐色のビール。大麦麦芽を強く焦がして発酵させる。日本では,下面発酵でつくられる。
メルツェンビール(Marzenbier)メルツ(Marz)とは,ドイツ語で3月のこと。近代的な冷凍機のなかった時代のドイツでは,寒い3月に仕込まれた中濃色の芳醇なビールに,メルツェンビールの名が使われた。
スタウト(Stout)イギリスの濃色ビール。砂糖を一部原料として使用しており,麦芽の香味が高い。ホップを特にきかせたビター・スタウト(Bitter Stout)と,ホップは適度で砂糖を多くしたスイート・スタウト(Sweet Stout)がある。黒ビールと似ているが,製法,風味ともにかなり異なっている。